ホテル業界には関心がなかったのに、社員と話したら気になって、最後の自由交流でもう一度訪ねた。大阪で開かれた「ASOBIBA FES」の開催報告には、そんな学生の反応が紹介されています。
会社名を見て回る先を決める就活では、出会わなかったかもしれない仕事です。どんな時間を過ごすと、その変化が起きるのでしょうか。
ASOBIBA FESは、2026年10月10日に大阪・梅田で初めて開かれた、新卒・インターン向けの採用イベントです。今回は、10月23日に主催者のForTwoが公表した参加学生・出展企業の感想から、期待できそうなことと、参加前に知っておきたい点を見てみます。確認できた体験談は主に主催者が選んだ声で、不満の内訳や参加者全員の回答までは分かりません。
まず会場の写真を見ると、企業名のパネルを置いたテーブルが並び、一つのテーブルを数人で囲んでいるのが分かります。あちこちの卓で、顔を向け合って話す場面が同時に進んでいます。「社員と同じテーブルで話す」とは、こんな距離感です。

自分では選ばない会社の話を聞ける
開催報告で目を引くのは、学生が、自分で訪問先を選んでいたら話を聞かなかった企業と出会えたと振り返っていることです。ホテルの「カペラ京都」側からも、ホテル業界に関心のなかった学生とつながり、学生が大切にしていることを知れた、という感想が紹介されています。
カペラ京都の紹介物が写る写真では、ホテルの写真資料を卓上に広げ、学生と社員が向かい合っています。会場全体の写真と比べると、一社の卓でどんなふうに話すのかが見えてきます。写真に写っている人と、掲載された感想を述べた人が同じかどうかは分かりません。

この二つの声から期待できるのは、今の志望業界に入っていない会社を、働く人との会話から知れることです。ホテルと聞いて思い浮かべる仕事と、社員が話す仕事に、どんな違いがあるのか。気になれば、その場でもう一度聞きに行けます。
ただし、この学生がホテルへの就職を決めたとは書かれていません。ここで確認できる変化は、まず関心を持ち、さらに話を聞こうとしたことです。それだけでも、企業を調べる前の段階では意味があります。
1社25分、社員と一緒にミッションに取り組む
初回は梅田スカイビルに学生58人、ホテル・教育・IT・メーカーなどの企業12社が集まりました。学生にはアプリで訪問先6社が案内され、1社につき25分、社員と同じテーブルでミッションや対話に取り組んだと報告されています。
交流が終わるたびに、学生と企業が、それぞれ相手への関心をシステムで回答します。最後の20分は、学生がもう一度話したい企業を自由に訪ねる時間。最初の交流で見つけた疑問を、次の会話へつなげられる構成です。
この時間は、自分で自由にブースを選んで歩く形式とは異なります。知らない会社に出会える仕組みの裏返しでもありますが、訪問先の決め方や個々のミッションの詳しい課題文までは、開催報告から確認できませんでした。
参加を考えるなら、「どんな課題に取り組むのか」「訪問先はどう決まるのか」は知っておきたいところです。共同作業をする形式でも、その内容によって、触れられる仕事の範囲は変わります。
企業の声には、会話のしやすさも表れている
出展した株式会社ベルは、一緒にテーブルを囲んで話す形式を評価しています。株式会社EGIJの感想には、訪問する学生が事前に決まっており、ほかの企業と呼び込みで競い合わずに済んだという点が挙がりました。
企業にとっての利点ですが、学生の過ごし方にも関係しそうです。企業側が呼び込みに時間を使わず、決まった相手と話せるなら、その25分を会話に使いやすくなります。ただし、全ブースで同じだけ話せたことを示す記録ではありません。
こうした声を見ると、ASOBIBA FESは、多数の会社を短く見て回るより、限られた会社とやり取りをする時間を取りたい人に魅力がありそうです。反対に、志望企業や聞きたい募集職種が決まっている人は、その企業・職種の担当者と話せるかで参加の価値が変わります。
「相互マッチ128組」は、内定128件ではない
初回では、集計対象313組のうち128組で「相互マッチ」が成立しました。これは、学生と企業の両方が、相手について「知りたい」以上の関心を回答した組み合わせです。同じ学生や企業が複数の組に入るため、人数でも内定数でもありません。
イベント後に面談を希望する学生がいた、という企業の報告もあります。その後も話す接点ができたことと、選考を通過したことは別です。入社後にその会社で続けられるかも、この数字からは分かりません。
この違いは、開催前の7月28日の案内と並べると、より大事になります。事前の発表は、価値観の合う相手と出会い、採用の行き違いをなくすことを強く打ち出していました。しかし、今回公表されたのは、交流直後の関心や個別の感想です。診断の考え方に納得できても、それだけで自分に合う就職先が決まるわけではありません。
期待したいのは、仕事を知る入口が増えること
初回の声を読む限り、このイベントで期待したいのは、知らなかった業界の社員と話し、もう少し調べてみたい会社を見つけることです。「ホテルは自分と関係がなさそう」と思っていた人の関心が動いた例には、この形式の面白さが表れています。
ただ、イベントで社員と話しやすかったとしても、配属先の仕事、給与、働く時間まで同じように魅力的とは限りません。関心を持った理由を、次は実際の業務や募集条件と照らし合わせる。その段階まで進んで初めて、応募先を選ぶ材料になります。
2026年10月24日時点で、次回は2027年9月3日の開催予定と案内されています。今回調べた資料では、次回の学生向け申込条件や参加費を確認できませんでした。主催者の関連案内は出展企業向けの内容も含むため、学生の参加受付と取り違えないようにしてください。
今の志望先に確信がなくても、話したことのない業界の社員と過ごす25分なら、調べてみたい仕事が増えるかもしれません。初回の感想で確かめられたのは、その入口としての面白さでした。


