キャンピングカーに泊まり、昼は農家の仕事を手伝う。休暇の過ごし方のようでいて、働く場所を知る旅でもある。静岡県袋井市と「おてつたび」が10月21日に発表した、2泊3日の農業就労体験です。
面白いのは、農家を見学するだけでなく、受け入れ先と雇用契約を結び、仕事をして報酬を受け取るところ。収穫を楽しむ旅行と、何が違うのでしょうか。
3日間、ずっと観光する旅ではない
運営会社の発表によると、予定日は11月11日から13日。メロン、お茶、トマト、みかん、露地野菜を扱う市内5農家が、計10人程度を受け入れる企画です。キャンピングカーでの滞在を基本に、仕事と交流を組み合わせています。
- 初日は袋井市や農業について知り、農家や参加者と交流する。
- 2日目は、それぞれの農家で働く。
- 3日目も午前中まで働き、その後に振り返りや地域で過ごす時間を設ける。
例えば鈴木メロン農園の掲載ページには、苗を支える道具の取り付け、メロンの運搬、出荷用の箱づくりなどが並びます。観光では食べる側だったメロンも、仕事として見ると、育てる途中や出荷を支える作業まで広がります。
なお、10月23日の確認時点で、同農園と次に紹介する農園の個別ページには「応募受付終了」「現在、募集中の日程はありません」と表示されていました。この記事は企画と仕事内容を読むもので、現在応募できるという案内ではありません。
トマトの仕事は、収穫だけじゃない
もう一つの受け入れ先、BigRootsの掲載内容では、トマトのわき芽を取る、枝を整理する、つり直すといった栽培管理が中心です。農業現場で使っているシステムの操作体験も案内されています。
農業体験という言葉から、熟した実を摘む場面だけを想像していると、少し意外かもしれません。これから育つ実のために、日々の手入れを続ける。その地道な部分に触れられるのが、仕事として滞在する面白さでしょう。
もちろん、今回どの作業を担当するかは、生育や当日の状況で変わります。システムの操作体験があるからといって、IT職として採用される企画でもありません。「農業に興味がある」を、どの作業が気になるかまで近づけられる機会として読むと、仕事内容の解像度が上がります。
車で寝泊まりするなら、暮らす時間も仕事選びの一部
掲載ページでは、滞在と移動は同性の参加者2人1組を基本にキャンピングカーを使い、夜はRVパークへ駐車する形です。普通免許で運転できる車を案内しつつ、免許がない人は免許のある人との組み合わせを検討する旨も書かれています。免許不要と一律に受け取る内容ではありません。
ここは、行きたい人が分かれそうです。ひとりでホテルに泊まる旅とは違い、移動や寝泊まりを他の参加者と分け合います。農作業の時間が楽しそうでも、運転への慣れや相部屋での過ごしやすさが合わなければ、滞在全体は楽しみにくくなります。
報酬だけで旅費をまかなえるかも、別の話です。BigRootsのページでは食事を自分で調達する案内に加え、最終日の振り返りを兼ねた昼食に2,500円の現地払いが示されています。今回の募集を見るなら、仕事をする時間と、勤務外に自分で払う時間を分ける必要があります。
同ページの上部には12時間分として13,848円と表示される一方、本文には、最終日は半日勤務のため合計約7.5時間、報酬は8,500円前後の見込みという補足があります。いずれも掲載側の表示・見込みで、実際の支給額を確認した数字ではありません。見出しの金額だけで収支を計算せず、個別の勤務時間と補足まで読む。そのひと手間も、普通の宿泊予約とは違うところです。
「農業に転職する」の手前に、働いてみる時間を
この企画の魅力は、旅をきっかけに、仕事を現物で知ろうとしている点にあります。いきなり移住や就農を決める前に、作業の細かさ、人との距離、地域での過ごし方に触れられます。
一方、2泊3日で分かるのは、その季節、その農家、その日に行う仕事です。農家の年間収入や、夏と冬の負担、独立する費用まで分かるわけではありません。今回の発表は実施前のものなので、参加者が就農を決めたという結果もまだありません。
だからこそ、旅の後に残るものを「農業に向いているか」の合否だけにしなくてよさそうです。苗の世話が気になった、出荷の段取りをもっと知りたい、地域にはまた遊びに来たい。仕事を知る入口としては、そのくらい具体的な関心が一つ増えるだけでも、次の旅や働き方の選択が変わってきます。

