ライブの発表があると、会場より先に日程を見る。平日か、遠征が必要か、翌朝は働けるか。「推し活を続けながら働きたい」という希望は、休日数だけでは説明しきれない、かなり具体的な生活の条件です。
そこで目を引くのが「推し活休暇」のある会社。ただ、その名前を見つけた時点で、行きたい公演の日に休めるとまでは分かりません。制度の有無、使える理由、普段の働き方を分けて読むと、会社選びの見方が変わります。
調査で挙がったのは、特別な休暇だけではなかった
マイナビが2026年8月に公表した推し活と仕事に関する調査では、推し活をしている正社員の56.4%が、推し活をしやすい企業に魅力を感じると答えています。20代では61.7%でした。
具体的な職場環境として挙がったのは、休暇の取りやすさ、フレックスタイム、テレワーク、周囲から批判されないことなどです。好きなものに使う時間を、自分で組み立てられるか。その話は、休暇の名前より広いところにあります。
同じ調査の企業側の回答では、推し活を支援する制度を導入している割合は11.0%でした。ただし、これには休暇だけでなく補助金なども含まれます。「企業の11%に推し活休暇がある」という読み替えはできません。調査の対象も、全国の正社員と条件を満たす中途採用担当者であり、すべての若者や企業をそのまま代表する数字ではありません。
名前が楽しそうな制度にも、使う場面がある
実際の企業の制度を見てみましょう。サニーサイドアップグループの「32の制度」の紹介には、ライブなどの体験費用の一部を会社が支給する制度があります。これは体験の費用を支える仕組みで、ライブの当日に必ず休めるという説明ではありません。
また、同社は「失恋休暇」の説明の中で、2次元・3次元を問わず推しに関わる気持ちにも触れています。ここから読み取れるのは、その会社が何を福利厚生の対象として言葉にしているかです。名称や発想が面白いからといって、自分が必要とする日程・回数・使い方まで一致するとは限りません。
同社の公開された利用者の声には、PRの仕事で世の中の動きに触れることと、エンタメ費用の支援を結び付けて語る記録もあります。単に趣味を認めるだけでなく、その会社の仕事との接点が制度に表れている例です。ただし、会社が選んで公開する声から、すべての社員が同じように利用できているとまでは分かりません。
「年に1日あれば足りる人」と「土日が空いてほしい人」は違う
たとえば、年に一度の遠征なら、まとまった休みの取り方や申請時期が大切かもしれません。毎月の現場へ行きたいなら、曜日の決まり方、シフトの提出・確定時期、終演後の移動まで関わります。これは特定の企業の利用例ではなく、仕事と予定を照らすための編集部の考え方です。
「趣味を大事にしてよい会社か」という問いと、「自分の予定で働けるか」という問いも、少し違います。趣味に理解があっても、土日に動く仕事はあります。反対に、特別な制度名がなくても、もともとの休日や勤務時間が自分の活動と合う場合があります。
求人を比べる際は、特別休暇、年次有給休暇、通常の休日を混ぜず、どの枠をいつ使う想定かを読みましょう。制度の対象や回数、申請方法が分からなければ、入社前の確認事項になります。
聞くなら、趣味を説明するだけでなく「休み方」を聞く
面接で推しの名前から説明を始めなくても構いません。たとえば「年に数回、平日に私用で休みを取りたいと考えています。休暇申請の流れと、繁忙期の調整の仕方を教えていただけますか」と聞けば、知りたい働き方を具体的に確かめられます。これは編集部の質問例で、採用されやすい言い方を保証するものではありません。
シフト勤務なら、希望を出す期限や、確定後に変更を相談する場合の仕組みが分かると、チケットの申込みとの時間差も考えられます。応募先が公表している勤務実態や休暇の説明も読み、制度名だけでは見えない部分を質問します。
推し活を仕事の能力証明へ変えなければ、会社選びで語れないわけではありません。何のために働き、仕事以外に何を続けたいか。その希望を、実際の曜日、時間、費用に置き直すと、広告の一言よりも自分に合う条件が見えてきます。


