AIの仕事と聞くと、まずプログラムを書く姿が浮かぶかもしれません。ところが求人には「ビジネスリードエンジニア」という、少し想像しにくい名前も登場しています。営業なのか、開発なのか。それとも、両方なのでしょうか。
サイバーエージェントは10月20日、2028年度の新卒エンジニア採用で、AI・データ分野に二つの採用枠を設けたと発表しました。名前の違いをたどると、技術を使って「何を変えるか」を考える仕事と、技術の設計を深く担う仕事が見えてきます。
「ビジネス」が付いても、自分でつくる
新しい採用案内によると、ビジネスリードエンジニアは、事業の現場で課題を見つけ、必要な技術を選んで設計・実装する役割です。状況によっては顧客への提案にも関わります。依頼されたものを完成させる前に、「そもそも、これをつくると誰の何が変わるのか」から考えるわけです。
もう一方のテックリードエンジニアは、システムの全体構造や技術の選び方を決め、品質や開発の進め方を高める役割です。こちらにも事業への理解は必要でしょう。二つを「人と話す人」と「コードを書く人」に分けてしまうと、仕事内容を取り違えます。
| 採用枠 | 主に引き受ける問い |
|---|---|
| ビジネスリード (AI・データ) |
事業のどの課題を解き、技術でどんな変化を起こすか。自ら設計・実装し、使われた先の成果まで関わる。 |
| テックリード (AI・データ) |
どの技術や構造を選ぶと、製品・サービスを高い品質でつくり、運用し続けられるか。 |
これは公式の役割説明を短く整理したものです。技術力の上下や、文系・理系を分ける表ではありません。
番組制作の現場に入ると、何が変わる?
職種名だけではまだ遠い話に感じます。そこで手掛かりになるのが、9月30日に会社が公開したABEMAの開発担当者・中澤優一郎さんへのインタビューです。映像の解析や、ニュース速報動画の制作支援に関わる仕事が紹介されています。
中澤さんのチームは、制作側から欲しい機能を聞くだけでなく、現場に入って課題を見つけ、動くものを提案する進め方を説明しています。面白いのは、作業を自動化して喜ばれることと、番組がより多くの人に届くことを、同じ成果として扱っていない点です。
例えば、動画を切り出す手間を減らせても、その先で何に時間を使えるようになったのか。届けたい番組の紹介を増やせたのか。「便利になった」の先を、制作する人と一緒に追いかける。そう読むと、この職種の「ビジネス」が、単なる営業活動より広いことが分かります。
インタビューは企業自身が選んだ事例です。全社員が同じ進め方をしているという証明ではありませんが、募集要項の抽象的な言葉を、実際の仕事へ引き寄せる材料になります。
新しいのは、名前だけではない
今回の募集は突然生まれたものでもありません。同社は8月28日の発表で、エンジニアの評価制度を刷新し、この役割を新たなキャリアとして定義していました。10月の新卒採用は、その考え方を採用の入口にもつなげたものです。
ここは、職種名を読むうえで大事な違いです。「AIが使えます」という技能の名前に加えて、入社後にどこまで判断し、何に責任を持つのかが示されています。技術の仕事に関心がある人にとっては、自分がどの場面に面白さを感じるかを、仕事内容で考えやすくなります。
ただし、会社が掲げる将来の開発自動化は目標です。この採用枠の新設だけで、仕事の成果や育成の効果が確かめられたわけではありません。名前に期待するなら、その役割を学ぶ機会や、仕事を任される範囲まで知りたくなります。
応募の入口では、二つから一つを選ぶ
10月23日に確認した案内では、対象は2028年4月以降に入社でき、AI・データの経験や知識がある人です。学年・学科・専攻は問わないとされていますが、専門知識が不要という意味ではありません。
二つの採用枠の併願はできず、応募時は一方を選びます。一方、選考途中の変更は本人の希望に応じて可能と案内されています。対象や応募方法は、新卒エンジニア採用サイトから確認できます。
研究で手法を磨くのが面白いのか。使う人の困りごとから、つくるものを考えるのが面白いのか。どちらも技術を使う仕事です。今回の二つの入口は、AIの仕事を「何が使えるか」だけでなく、その技術を、誰のどんな変化につなげたいかから眺めるきっかけになりそうです。

